またまた信越特雪、リベンジ編


2011.2/1


 去る1月20日の特雪から10日経った。あの1回目の特雪の後、週末寒波が一段落した1月28日、早くも2回目の特雪が出てしまった。事前情報を掴んでいたにも関わらず、当日は仕事だったので溜飲を下げたのだが、こんなにピッチが速く特雪が出てしまったからには、3回目はかなり間を置いた2月中旬にあるだろうと予想を踏んでいた。ところが、である。2回目の特雪が出た数日後、日本海側は再び本年最大の大寒波に見舞われることになる。金沢支社管内の列車はほとんどが運休。当然主要都市間を結ぶ特急列車も軒並みダウンしてしまい、引いては国道や高速道路も数百台の車が雪に阻まれ立ち往生とニュースの見出しに踊っていた。とんでもないことになっているようだ・・・・。そろそろ三たびヤツの出番なような気がした。

特殊な排雪をするアレが・・・。

 仕事中も休憩中も、出社時帰宅時と情報を逐一確認する。と、前回と同様の運休予告が発表された。前回も文言は全く同じ。明日信越山線では除雪のため昼間の列車を運休にするそうだ。こうも判り易すぎちゃ、天気図と現地情報と睨めっこして出動予測を立て、イチかバチかで新潟入りしていた頃が懐かしくさえ思える。とかく世の中は便利になったものである。それはさておき明日は休みにも関わらず、やらなければならない仕事があったので休日出社のつもりであったが、こんな情報を知ってしまったからにはタダで見過ごすわけにはいかない。まだ間に合う。それからというもの、明日やらなければならない仕事をかつてないほどの集中力で猛烈に片づけて、終わったのは22時を回った頃だった。よしっ行ける! パソコンの電源を落として「お先に〜!!」と小走りに職場を後にする。自宅に到着し、いつもの撮影機材を車に積み込みネクタイから防寒着に変身。練馬ICを目指して走った。

 関越に入り雪氷情報を確認すると、関越道は小千谷から北、上信越は妙高から北がチェーン規制だという。降雪のピークは過ぎたものの里雪が依然続いているようだ。今晩中に現地入りする必要はないので、途中眠くなったら寝ようという考えで北上した結果、今日は小布施PAまでたどり着けた。ここからなら現地まで1時間かからない。7時まで4時間ほど仮眠を取ることにした。
 そして朝。目覚めの缶コーヒーをすすりながら北上開始。今日は良く晴れている。妙高山も山頂まで見えて美しい。これなら絶好のロケーションで特殊排雪を拝めそうだ。初回1月20日の特雪は凄まじい降雪の中、まともな釣果は無かった。2回目は出撃することは出来なかったが、雪の一日だったという。そして今日、3回目はこんなに天気に恵まれてしまった。前回の恨みを晴らすべく勇んで山を一つ越え、高速を降りて市街を抜け街や沿線の様子を調べると、想像を絶する光景がそこにはあった。積雪がスゴイのである。純粋に平地では2m以上。道路脇は除けられた雪が壁となって3m以上あるようだ。つまり・・・

一体どこで撮るんだ!?

 当然道路脇からなんて線路は見えず、イヤでもどこかであの3m以上ある雪壁を這い登らなければならないのは必至の状況で、脚立、スコップ、カンジキを持ってきていない、完全軽装備で来てしまったことを今更ながら後悔した。とりあえず他の撮影者や地元の方達に迷惑を掛けないことだけを気をつけよう。まず一発目の撮影場所を探しながらクルマを流していると、前回激パで諦めた二本木手前の旧国道並走区間に到着した。路肩の雪は良く締まっており、つま先で階段を作りながら登ると簡単に上に立つことが出来た。まだ通過予定時刻3時間前なので誰もいない。早めに場所取りをしようと三脚だけを広げてクルマに戻る。すると続々と県外ナンバーが集結してきた。置きゲバしてあるとは言え少々心配だ。通過まであと2時間。仕方なしに外で待機することにした。晴れているとはいっても気温は氷点下。カメラとビデオのバッテリーを懐に入れて温めながらひたすら耐え忍ぶ時間が始まった。

 運休前の最後の普通列車がヤマから音も無く滑り降りてきた。周りを見渡すと撮影部隊は20人以上に膨れ上がっていた。靴底から伝わる雪の冷たさに足先の限界が近づいた頃、ついに遠くの踏切が鳴り出した。5分、10分、遠くでパタパタという音が聞こえてきた。そしてDD14がようやく姿を見せた。







曇ってしまったが真っ向から327号機を狙い撃つ。雪の量は前回の比ではない。
2011.2/1  信越本線  新井〜二本木  EOS5D 100-400mm



2011.2/1  信越本線  新井〜二本木  EOS5D 100-400mm



追っかけて二本木手前の雪捨て場の山の上から。
2011.2/1  信越本線  新井〜二本木  EOS5D 24-105mm

 上記写真からさらに追っかける。二本木駅を過ぎて線路に並走する住宅地の路地に入ると、2週間前とはまるで別世界の様相だった。車道中心部は除雪されているものの道路脇に積まれた雪にさらに新雪が降り積もり3m以上の雪壁回廊。その新しく載っかった雪がこぼれおちそうになっている。除雪しようにも雪のやり場が無いって言ったくらいだ。ところどころ雪壁も崩落しており、それを縫うようにして走り、前回猛降雪でホワイトアウトしてしまった、例の踏切にやって来た。ここはかなりの人出が予想されたが先客は1名。挨拶して周囲の様子をうかがうが、線路際、道路脇ともに3m以上の積雪でまともに撮れる場所は無いようで、こうなりゃその3mの雪にアタックするして雪の上に出て線路を覗きこむしか方法は無かった。適当にエイヤーと雪壁に突進して必死に這いあがろうとしてもがいてみたが、降ったばかりの新雪は予想以上に深くフカフカで、もがけばもがくほど体が沈んでしまう。脚立、カンジキ、スコップの三種の神器を持ってきていない丸腰ではまるで刃が立たなかった。首まで雪に埋まり諦めかけたオレに、先ほどの先客の方が見かねて声を掛けてくれた。「前回の特雪の時の誰かの踏み跡が残っているんじゃない?この辺だったかなー・・・」とサクサクスコップで雪壁を崩していると、本当に足場が出現した。素人丸出しでかなり恥ずかしかったがこれには本当に感謝感激だった。何度もお礼を言い雪原に這い出ると、空は雲が多いものの晴れ間も差し、千載一遇のチャンスだ。一生の思い出になる名シーンの展開が期待できた。

 しばらくすると後続の撮影者が続々と集まるが、限られた場所のため他を求めて移動していった人も数名。現場に残った10名ほどが穏やかな太陽光を浴びてDD14の登場を待っていた。すぐに踏切は鳴り、やがて遠方で雪煙が望めた。かなり念入りに作業しているようでなかなか近づいてこない。踏切が鳴り出して10分後、ついに赤い機関車がファインダーに飛び込んできた。







まさに歩くようなスピードで進路を切り拓いてきたDD14327。
2011.2/1  信越本線  二本木〜関山  EOS5D 24-105mm


 牛歩の如くとはこのこと。シャッターを切りながらも国内最後の特殊排雪を肉眼に焼き付けておこうと、しばらく贅沢な見るテツをしながら働くDD14をしっかりと記憶に刻んだ。轟音と共に大迫力でわずか数m前をDD14が前方投雪をしているこの非日常。あぁ来た甲斐あった! 通過後、撤収して先を急ぐ追っかけ組に混ざろうかと振り向いた時、逆光の中、盛大なスプレーで行き去るDD14の美しさに思わずハッとなった。5秒ほど見とれてしまっていたが、おぉ、いかんいかん。適当に電子ダイアルをアンダーに回して望遠でシュート。もう我を忘れてシャッターを切った。




セット3。フルパワーで投雪するDD14は、ただただ美しかった。
2011.2/1  信越本線  二本木〜関山  EOS5D 24-105mm


 車に戻りびしょ濡れになったカメラとビデオをシートに放り投げて先を急ぐ。次は今まで行ったことのなかった、超有名スポットの関山手前の防雪林バックに行ってみた。時間も無く線路に近付くことは出来なかったが、雪原に散らばったテツの皆さんがいい味出していたので、想い出としてそれも絡めて頂戴した。




2011.2/1  信越本線  二本木〜関山  EOS5D 24-105mm


 雪原に散らばった多くのギャラリーに見守られDD14は関山を通過して行った。いよいよここから信越特雪のハイライト区間!目的地の妙高高原まであと1駅だ。しかしこの先は並行する道路はあるものの、冬季は積雪のためほとんどが通行止め。気軽に道路から線路に接近する所は非常に少なくなってしまい、佳境区間であるこの関山〜妙高高原で特雪を撮るには、1ショットのためにじっくり腰を据えて気長に待ち構える必要がある。次回3回目に遭遇することが出来たらチャレンジしてみよう。今日はもう1発途中区間で、最後は妙高高原駅の進入でフィニッシュのつもりだ。その途中区間での撮影地を探す。冬季も除雪されていそうな道路が線路とクロスしているポイントをカーナビで発見しておいたので行ってみると、線路はオーバークロスで道路を越える。二本木〜関山でもオーバークロスする築堤によじ登って投雪を順光で撃ち取れるカーブがあって有名だが、ここはその線路面も高く、どうもよじ登るのは不可能な様子。諦めてそのまま線路をくぐって河原まで降り、トラス橋をサイドから狙えるポイントで構えてみた。ここは誰もいない。はてもう行ってしまったのか?そんなはずはないだろうと深雪に三脚をしっかり固定してしばらく待ってみた。到着していた時は稜線までくっきり見えていた背後の山は、いつしか雲に覆われ始め、ついに本降りの雪になって来た。30分くらい待っただろうか。ガラガラとエンジン音が林の奥から響いてきた。




2011.2/1  信越本線  関山〜妙高高原  EOS5D 100-400mm


 次は妙高高原駅へ急ぐ。その道すがら、さっきここでは撮れないだろうと思っていたオーバークロス付近には10台以上のテツ車が主人の帰りを待っていた。皆、スコップで雪壁を階段状に掘り、築堤上に這い出て撮影している模様。スゲー!そういう手があったのか、と感心するも束の間、妙高高原駅に到着した。¥140の入場券を購入し構内へ。数名の同志がホームで待機しており、自分はホーム先端から特雪の入線を待ち構えた。やがて2番線に停車していた長野行き普電が出発するとすぐに、そこに直江津から長い闘いをしてきたDD14が入線して来た。
















2011.2/1  信越本線  いずれも妙高高原  EOS5D 24-105mm


 これにて追っかけは終了した。前回訪れた1月20日の特雪は折返しの際、直江津方DD14332も投雪していたという。今日はほぼ全線に渡ってくまなく作業をしてきたようなので、貴重な側方投雪は期待できそうにもない。ならば本日もここにて終了。長野市内まで一般道を走り、そこから高速に乗って帰還した。

 今年2回目、通算3回の信越本線特雪を撮影してきたわけだが、次回また来ることができたらどう迎え撃とうか。結局皆と同じ行動をしていたならいつも同じような写真になってしまうだろうし、かと言って1地点でじっくりというのも性に合わないような気がしてならない。まぁ多分後者を選ぶだろう。まだまだ行けるぞ、信越特雪。北陸新幹線が開通するまでのあと2シーズン。少しでも多くのシーンに立ち会ってみたいと思った。